下肢静脈瘤の治療・手術

下肢静脈瘤とは

下肢静脈瘤下肢静脈瘤は、足の血管が瘤のように膨れる疾患です。
一般的にはがんや心臓病と異なり、生命に影響を及ぼさない良性疾患ですが、
放置して治ることはありません。
むくみやだるさを感じ、足の血管のふくらみが目立つという外見上の問題に悩む患者様もいます。
進行すると、出血や皮膚潰瘍(皮膚の破れ)、重症感染症を引き起こすことがある疾患です。

下肢静脈瘤の原因

足の静脈という血管には、重力に逆らって血液を心臓に戻すために、血液の逆流を防ぐ弁があります。
何らかの原因で弁が不調になると、血液が足に溜まりやすくなり、血管が蛇行、拡張して瘤ができて下肢静脈瘤になります。
主な症状としては、血液の流れが悪くなってだるさやむくみなどを感じます。

下肢静脈瘤になりやすい要因

下肢静脈瘤の種類

伏在型
伏在型下肢静脈瘤の中で一番多い型です。膝の裏やふくらはぎ、太腿にできやすいです。
表在静脈本幹である大伏在静脈や小伏在静脈に発症し、足に太い瘤ができて
膨らんだ血管や蛇行するのが特徴です。

大伏在静脈:足首の内側から足の付け根まで伸びている血管
小伏在静脈:アキレス腱の外側から膝の裏まで伸びている血管
側枝型

側枝型伏在静脈本幹から枝分かれした静脈が広がることで発症します。
膝から下に発症しやすく、分枝静脈瘤とも言われます。

陰部

子宮周りや卵巣の静脈から血が逆流してできる静脈瘤です。
月経の際に、子宮や卵巣の血流が増えるとともに症状がひどくなるのが代表的な特徴です。
曲がりくねった血管が、鼠径から太ももの裏にかけて、時折膨らみながら斜めに走行します。

クモの巣状・網目状

網目、クモ状クモの巣静脈瘤は、直径1mm以下の真皮内静脈瘤で、見た目がクモの巣のように現れます。網目静脈瘤は直径数mm程度の静脈瘤です。
両方とも瘤がなくて盛り上がりません。

治療が必要な条件

次の①、②に該当する時には、静脈瘤の治療をご検討ください。

①静脈瘤の症状で生活に不具合が出る場合

  • かゆみや潰瘍、皮膚炎など静脈瘤の皮膚症状がある
  • 立ち仕事で足のむくみや疲労感、だるさ、痛みがひどい

②美容的な問題(見た目に悩んで精神的に辛く、社会活動が行いにくい場合)

  • 見た目に悩んで、気分が落ち込む
  • 足を見られたくなくてプールや温泉を楽しめない
  • 静脈瘤のせいで、足の出るスカートやパンツを履けない

上記の項目に該当がなければ、治療せずに経過をみる場合もございます。

当院の下肢静脈瘤の治療について

圧迫療法

下肢静脈瘤の圧迫療法は、医療用の弾性ストッキングを履くことによって、血流を表在から深部へ、下から上へ押し出し、血流を改善します。
血流改善に伴って、むくみが改善して足が軽くなるのを実感できると思います。ただし、寝ている間は着用しないようにしてください。
圧迫療法は下肢静脈瘤を治すものではなく、一時的に症状を改善するのを目的としています。
弾性ストッキングは数ヶ月で圧力がなくなってしまうので、1年で2、3回交換が必要になります。
合併症として、湿疹やかぶれなどの皮膚トラブルを認めることがありますのでこれらの症状が出た場合には使用を中止し、医師にご相談ください。

メリット

  • 着用のみ
  • 手軽に始められる
  • 費用が安価

デメリット

  • 暑く、夏などには蒸れてかぶれやすい
  • 効果があるのは着用している時のみ
  • 保険が適応されない

硬化療法

注射を利用した治療法です。静脈瘤にポリドカスクレロールという硬化剤を挿れると静脈の内膜に炎症が起きます。
皮膚上から圧迫されることで静脈が完全に閉塞し、徐々に小さくなって吸収され、次第に静脈瘤が消えていきます。
血液が再度正常の流れになり、症状が良くなります。入院や麻酔も不要で、治療時間は約10〜15分で終わります。
切開しないので傷も目立ちません。硬化療法のみで静脈瘤が治るわけではなく、レーザー治療と組み合わせて行うことがあります。
合併症として、注入部位に色が付いたり、静脈炎や血栓ができたりします。

メリット

  • 保険適応
  • 入院、麻酔が不要
  • 傷跡が目立たない

デメリット

  • しこりが残ることがある
  • 治療した部位に一定期間色素沈着することがある
    (半年程度)
  • 約2〜3割が再発する
  • 注射時に痛む

レーザー治療
(下肢静脈瘤血管内焼灼術)

レーザー治療は、血管内に照射したレーザーの熱で弁不全を起こした静脈を塞ぐ治療法です。
細い光ファイバーを使用するため、刺入部の傷が目立たず、日帰りで局所麻酔による手術が可能で身体への負担も少ないことが特徴です。
日本では2011年1月に保険が適応されるようになり、その後よりターゲットの血管のみにエネルギーが集中する1470nmの波長のファイバーが
登場しました。当院でも、この最新機種を使用して治療をしています。
レーザー治療は、身体への負担が少ないため、終了直後から通常の生活を送ることができます。また、根治性にも優れています。
安全かつ最新の治療法であるレーザー治療は傷が残りにくい特徴もあります。
専門医によるレーザー治療を受けたい方は、当院にお問い合わせください。

メリット

  • 傷跡が残りにくく目立たない
  • 保険適応なので費用負担が多くない
    (3割負担で、約4〜5万円)
  • 日帰り手術ができる
  • 侵襲性が低く、出血がほとんどないため身体への負担が少ない
  • 手術中、術後も痛みがほとんどない

デメリット

  • 稀に再発する場合がある

血管内塞栓術(グルー治療)

グルー治療保険治療で行うことができるVenaSeal™を導入しています。
血管内塞栓術(グルー治療)は伏在静脈にカテーテルを挿入して、伏在静脈を圧迫したまま
カテーテルの先端から医療用の瞬間接着剤を注入し伏在静脈を閉塞する治療です。
血管内焼灼術(レーザー治療)と違い、熱を伴わないため血管周囲の損傷リスクが
ありません。静脈の血管周囲に行う局所麻酔も必要なく、カテーテルを挿入する箇所の
局所麻酔のみで手術が可能です。
また、手術後すぐに仕事することも可能です。
なお、血管内塞栓術(グルー治療)後は弾性ストッキングの着用も不要です。

メリット

  • カテーテル挿入箇所の局所麻酔のみで手術可能
  • 静脈の麻酔が必要ない
  • 手術後の弾性ストッキング着用が必要ない
  • 手術後すぐに帰宅できる
  • 手術後すぐに仕事が可能

デメリット

  • 蛇行が強い(曲がりくねった)血管には適切でない 
  • 静脈瘤切除を同時に行うことが難しい
  • 接着剤が長期間体内に残る
  • 稀にアレルギー反応が出るため、アレルギー体質の方には適切でない

日帰り手術の流れ

1外来

心臓血管外科

Webまたはお電話で事前に予約をお願いします。
事前にWeb問診を入力、または紙の問診票にご記入いただきます。

2検査

超音波検査弁の状態や血管の太さをチェックするために超音波検査を実施します。

3説明
(検査結果説明、今後の治療法など)

検査結果の説明と、今後の治療方針を患者様と相談します。
手術の場合は、血液検査などを行い詳細の内容をお伝えし、日程を調整します。

4手術

手術室予約した日時にご来院いただきます。手術時間は片足で約30~40分ほど要します。

5手術後

リカバリールーム回復室で安静に過ごしていただきます。
その後、担当医から手術結果の説明を行います。

6帰宅

手術当日は、自転車や車の運転は控えてください。
同伴の方に車で来ていただくか、できる限りバスや電車の公共交通機関でのご来院がお勧めです。
自転車や車の運転も含め、基本的に手術の翌日から普段の生活を送ることができます。

7手術後の外来フォロー

受付手術翌日と、1ヶ月後に外来にて診察と超音波検査を実施します。
その後は、患者様と相談の上、3ヶ月後、6ヶ月後に受診していただき、
合併症や再発などがないか定期的にチェックいたします。

治療の費用(税込)

3割負担の場合 1割負担の場合
初診時
(初診料+超音波検査)
約2,500円 約900円
硬化療法 約5,000円 約2,000円
血管内焼灼術(片足) 約30,000円 約10,000円
血管塞栓術(片足) 約45,000円 約15,000円